少人数学校だからできること
生徒は「村民のひとり」として接する
子どもたちには個性と可能性を伸ばして欲しい
白川村唯一の学校「村立白川郷学園」。平成29年度から小中一貫の義務教育学校として、村の全ての子どもたちの教育を担っています。今回の「白川郷学園だより」では、独自の教育を行う白川郷学園開校時に赴任された鈴木大介先生に、白川郷学園ならではの学びについてお話を伺いました。
少人数学校だからできること
私は平成29年4月の白川郷学園開校時に赴任してきて、現在4年目です。開校時に赴任した教職員は私を含めて2名しかいませんね。それくらい入れ替わりが激しいんです。
もともと少人数教育や郷土教育に興味があって、赴任する前からプライベートで白川村には来ていました。観光ではなくて、平瀬の温泉で白川村がどんなところなのかをおばあちゃんから話を聞いたりしていました。
赴任してからも休日に生徒と村内を歩いたり、寄り合いに参加したりしています。そうしたら、徐々に地域の方から声を掛けていただけるようになってきました。みなさんよく話してくれるので、15分で歩ける道を1時間とか1時間半かかかる時もあるんです(笑)。
学校って敷居が高く思われていることが多いのですが、自分の足で地域を歩いてみて、村の方々が私のことを地域の一員としてみてくれるようになりました。そうすると、地域と学校の距離がぐっと近くなるんです。これは小さな村ならではだと思います。
生徒には「村民のひとり」として接する
地域の方とお話ししていると、困っていることや相談事を聞くことがあります。そんな時、私は地域の方から聞いたことを「〇〇さんが、こんなことで困っていたよ」と、そのまま子どもたちに伝えます。そうすると子どもたちはどうしたら解決できるか真剣に考えてくれるんです。
村の小さな課題を子どもたちが自ら考え、それをどう解決するか考える。これは白川郷学園が独自に行っている「村民学」の授業にも繋がっています。ただ単に「ふるさと大好き!」という郷土愛ではなくて、自分たちの村のことについて学び、そこにある資源をどう活かして解決するかというところまで考えることが大切だと思います。
子どもたちは学園の生徒という以前に、白川村の村民のひとりです。
古くから受け継がれてきた物事を大切にしながらも、子どもたちを中心に新しい文化を作っていくためには、一人一人が地域に対して影響力があるという自覚を持って欲しい。自分たちが暮らす地域のことを考え、行動することを促すことが私たち教員の役割だと思っています。
良識を持った村民が増えれば地域がさらによくなるし、それは村だけではなくて、村の子どもたちが社会に出た時に社会全体にもきっと良い影響を与えます。
子どもたちには個性と可能性を伸ばして欲しい
昨年度、当時の8年生(中学2年生)の村民学の授業では、子どもたちが村のお土産を新しく開発して販売するプロジェクトを行いました。
村民学の授業では村の課題を示した上で、それをどう解決するか、アイデア出しから子どもたちに委ねています。そうすることで、一人一人が自分にできることを最大限活かそうと頑張ります。できることというのは、普段学校で教えられている国語や数学といった勉強だけではありません。人と話すことが好きな子は接客をしたり、絵を描くのが得意な子は商品を売り場で紹介するポップを作ったり。これが個性を伸ばすことに繋がるんです。
もちろん国語や数学といった学習も大切ですが、社会で直面する問題は、何か一つの教科の知識で解決できるものではなく、複合的な力が必要なことばかりです。いつか白川郷学園での勉強が役に立ったということに気づいてくれることを願っています。
一つのことを達成すると、子どもたちは次から次へと色んなことに挑戦し初めて、それが子どもたちの可能性を広げていきます。そんな子どもたちの姿勢を受けて、私たち教員や大人は子どもと同じ目線で、自分たちも困っていることを赤裸々に話して一緒に考えていくことを意識しています。そうすると全員でプロジェクトを進めている意識になり、一体となることで普段は気がつかない色んなことが見えてきます。
村民学で一緒にプロジェクトに取り組んだ当時の8年生は、この春卒業を迎えます。将来、みんなが自分自身を大切にしながら、周りの人たちのことも大切にして欲しいと思います。そのためにも白川郷学園を卒業して別の環境に行っても、自分の個性を大事にして、色んな人と関わりながら可能性を広げていって欲しいですね!
白川村立白川郷学園
住所:岐阜県大野郡白川村鳩谷614-1