料理自慢の村民の“食卓”にお邪魔します!
ばあちゃんの味 5軒目 | 西本美佐子さんの「だんご汁」
養蚕が盛んだった白川村で初午(2月の最初の午の日)に豊作を祈念して食べられてきた「だんご汁」。
「合掌造り 民家園」で30年以上村の文化の伝承に尽力してきた西本美佐子さんは、このだんご汁を民家園の先輩たちから引き継いできました。
具だくさんの汁の主役は、もちろんだんご。米粉、そば、きびの3種類で、かつては材料を一家に一台あった石臼で挽いて、水分を加えて丸め、蚕の繭の形に作られたそうです。現在は民家園で製造・販売されています。
作り方はシンプルで、まずは根菜を煮込み、そこへしいたけ、豆腐、だんごを加え、だし醤油で味を整えます。仕上げに美佐子さんの家庭で採れたやわらかな飛騨ネギを入れれば完成です。
「味付けは少しにして、素材の味を引き立てるのがポイントだよ」と美佐子さん。
ピンポン球ほどの大きさのおだんごは、口に入れるともっちりとした食感がありつつ、すっとかみきれて食べ応えは満点。野菜のだしがだんごによく染みて、ほっとする味わいです。
雪が降りしきる冬の白川村で、だんご汁の素朴であたたかな味は、お腹も心も満たしてくれます。
民家園では、だんご汁づくりをはじめ、蕎麦打ち、山菜取り、茅狩り、合掌造りの清掃など、幅広い仕事に尽力してきたという美佐子さん。苦労も多かったそうですが、「色々やってきて、乗り越えてきたからこそ今がある」と語ります。その姿は、白川村が育んできたさまざまな知恵や生業を守り、伝えることへの誇りに満ちて見えました。