人生を動かした、村の図書室との出会い
白川村の南部、平瀬にある旧平瀬小学校を活用した白川村南部地区文化会館(NBK)。ここには、児童書や郷土資料が揃う小さな図書室があります。
司書を務めるのは深田茉由(まゆ)さん。新潟県出身で大学進学を機に関東へ。そのまま観光業や販売業などに携わりながら社会人生活を送っていましたが、あるとき「自分の人生がひっくり変えるくらいの何かがほしい」と一念発起。2018年、筑波大学大学院に進学しました。
専攻は世界遺産学。日本各地の世界遺産に足を運ぶ中、2018年の夏、初めて白川村を訪れました。
その時、偶然NBKの図書室に立ち寄り、目の当たりにしたのは、村内外から寄贈されたデータ化を待つ大量の本でした。
元々本が好きで、学部生時代に司書の資格を取得していた茉由さん。大学院で興味のある世界遺産を学びながらも「わたしがやるべきことは何か」を探していた中での出会いに「これは私がやるべきことでは」と直感し、大学院を休学。書籍のデータ化を引き受けるため、半年間白川村に滞在することを決意したのです。
2019年の春、白川村での暮らしが始まると、日々図書室で本の整理に勤しみながらも、司書業務や、シェアハウス「やまごや以上ほしぞら未満」での暮らし、どぶろく祭などの地域のイベントを通じて徐々に村民との関わりが増えていきます。
「白川村は小さな村だからこそ〝一人〞の存在がすごく大きくて。自分が必要とされる実感が、ここで暮らしたいという想いに繋がっていきました」。
そんな想いが募った結果、茉由さんは当初の予定だった半年の滞在期限を延長。2019年の秋、本格的に村へ移り住むこととなったのです。
図書室を拠点に、村内外を奔走
現在茉由さんは、移住前から関わりがあった「一般社団法人ホワイエ」に所属し、週の半分は図書室で選書や蔵書管理を行っています。
選書は、村民のリクエストも取り入れて決定しているので、村民好みにラインナップになっているそう。
そのほか、「青空図書室」や「軽トラ図書カー」など、NBKを飛び出して本に親しめるイベントを実施。図書室に足を運んでもらうため、多彩な企画に取り組みます。
「どこか行こうか、となった時に図書室が選択肢に入るといいなと思っています。今後は、例えば料理を題材にした絵本を活用して、本と現実が繋がるようなイベントもやっていきたいですね」。
ちなみに図書室の気に入っているところは、大きな窓から臨む、四季の移り変わりが感じられる景色だそう。
「データ化を進めている時、1日中図書室に籠る日もあったのですが、この景色のおかげで乗り越えられました」と笑います。
さらに、一般社団法人ホワイエでは、2021年から若者が岐阜県内の各地に住みながら学ぶプログラム「岐阜住学」を運営。学生などの受入やプラグラム作りを通じて、村内外の人を繋げています。
村民も移住者も。みんなで暮らしを楽しくできれば
村を盛り上げるさまざまな活動に励む茉由さん。ですが、意外にも“地域のため”という意識はそれほど強くないと言います。
“自分が暮らす場所を楽しくしたい”という想いが、行動の原動力です。
「白川村は、村のことを自分ごととして考える人が多いのがすごいですよね。村民も移住者も、いっしょに白川村を楽しくしていけるといいなと思います」。
“暮らす場所を楽しく”。
茉由さんの素直な考え方は、図書室はもちろん、白川村にも新しい風を吹かせています。
深田 茉由(ふかだ まゆ)さん
大学院在学中、偶然白川村の図書室を訪れたことをきっかけに、2019年秋に白川村へ移住。現在は一般社団法人ホワイエで司書業務と学生受入支援等を行う。
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白川村南部地区文化会館(NBK)
深田さんが司書として働く図書室は、白川村南部の旧平瀬小学校を活用した白川村南部地区文化会館(NBK)にあります。図書室だけでなく、トレーニングルームや乳幼児室、調理室、音楽室のほか、勉強やサークル活動に使える学習室や研修室、懇親会や会議ができる食堂、誰でも自由に利用できるラウンジなどもあり、白川村民はもちろん、有料で村外の方も利用できます。
*南部地区文化会館図書室利用案内
白川村、飛騨地域に関する郷土資料、早稲田大学名誉教授柿崎京一先生からの寄贈本(農村社会学系)を含め、約2万冊の本を所有しています。
開館時間:平日 9:00~17:00/土日 月に4回開館(詳細日時は開館カレンダーをご確認下さい)
住所: 岐阜県大野郡白川村平瀬126-11
WEBサイト:https://www.lib-finder.net/shirakawa-go/
Instagram:https://www.instagram.com/nbk2180/