2023年9月25日、26日に白川村南部の平瀬地区でどぶろく祭が開催されました!

豊饒の秋に行われる白川郷の一大行事「どぶろく祭」。御神幸、獅子舞、民謡、舞踊などの神事が行われるとともに、神に捧げられたどぶろくが人々に振る舞われます。
そんなどぶろく祭は今年、4年ぶりの通常開催!
この記事では、観光客が多い地区のお祭りとは一味違う、“村民のための祭”の色が濃い、平瀬地区のどぶろく祭の様子を前後編でお届けします。
迫力ある獅子舞の披露!
2日間に渡って行われる平瀬地区のどぶろく祭。朝から平瀬八幡神社で神事を執り行い、午後からは村廻りで各組を巡りました。
そして、神社に戻ってから行われるのが還幸祭です。

神社には、平瀬地区の村民はもちろん、他の地区の村民、村外からの参拝者が獅子舞やどぶろくを待ち侘びていました。
どぶろくの振る舞いのため、ござを敷いて準備します。

そしていよいよ獅子舞奉納がスタート!村廻りでも一部の演目が行われましたが、この獅子舞奉納では全ての演目が披露されます。

白川村の獅子は4人の男性が舞い手となり、8本足となる「百足獅子」と呼ばれていて、全国的にも珍しい形態となっています。演目は各地区で異なり、平瀬地区では10の演目から成ります。各演目の始まりには、どんな場面の舞なのかの説明があるので、初めて見る人でもストーリーと共に楽しめます。
まずは獅子だけの演目。前後左右に移動するだけでなく、上下にも激しく、猛々しく乱舞します!舞い手の4人の息がぴったり合って、まるで本当に生きているかのようです!
笛や太鼓の音色も、境内に響きます。

演目が進むと、獅子に立ち向かう「ハナトリ」が登場!剣や「ザイ」といった道具を手に、力強く獅子と戦います。
ハナトリ(シシトリとも呼ばれます)を務めるのは、小学生から中学生の少年。一度役に就くと、引退の年齢までは同じ子が役を担い続けます。ハナトリになれるのは地区の中でも2人だけなので、幼い頃から獅子舞を見ている村の子どもたちにとっては、憧れの存在です。
今回大役を務めた2人も幼い頃からハナトリに憧れ、今年、念願のデビューとなりました。
1か月ほど稽古に明け暮れ、祭の前は「少し緊張する」と話していた二人ですが、果敢に、華麗に獅子に挑む姿には、思わず息を飲んで見入ってしまいます!
参拝者は声援をかけたり、拍手を送ったり、おひねりを投げ入れたりしながら、その力強い舞を楽しんでいました。
ここでしか味わえない、貴重などぶろくの振る舞い
獅子舞の演目の途中には「どぶろくの儀」が執り行われ、どぶろくの振る舞いもスタート!

獅子舞を見守っていた観客たちが、一気にゴザに腰を下ろします。どぶろくを注ぐのは、割烹着を着た女性や、法被を着た男性。
そして待ちに待ったどぶろくが、盃に注がれます…!

氏子が杜氏を担い、各地区で醸されるどぶろく。祭礼用に特別に作ることを許可された非売品なので、味わうことができるのは、このどぶろく祭だけ。献燈料を収めると入手できる盃で、いただくことができます。
さて、今年のお味は…?

平瀬地区のどぶろくは他の地区と比べて辛いのが特徴ですが、今年は飲み口がまろやか!後から辛みがじんわりと広がります。
「今年の出来は最高!」という杜氏さんの言葉通り、気がつくと何杯も飲んでしまいたくなるおいしさです…!

村外からの参加は少ない平瀬のどぶろく祭ですが、今年は体感として参拝者の数は4年前の1.5倍ほど。それだけ、このどぶろくを楽しみにしていた人がたくさんいるのだとわかります。
獅子舞を眺めながら、どぶろくを味わい、周りの人と語らって…これぞ祭!というような賑やかな時間が流れていきます。
さらに、獅子舞が終わると、どこからともなく民謡の歌声や四竹のおはやしが聞こえ、さっきまでどぶろくを楽しんでいた村民の民謡が始まります。この日のために帰省した懐かしい顔ぶれもいっしょに踊り出し、大盛り上がり!平瀬地区ならではの“みんなでつくる”アットホームな雰囲気で還幸祭は締めくくられました。
老若男女が一芸を披露。どぶろく祭は夜も楽しい
還幸祭が終わると、時間はすっかり夕暮れ。村外からの参拝者のほとんどは帰路につきますが、村民の楽しみはまだまだこれからです。
夜も祭は続きますが、まずは宴会!祭の夜は地区の家々でごちそうが振る舞われます。この日お邪魔したお宅では、山菜やアマゴがふんだんに使った料理が並んでいました。どぶろく祭の日は、村を出た出身者も帰郷する人が多く、親戚や近所の人、友人が集まって食事をします。
宴会を終えると、神社の前にある広場へ。
学校や仕事を終えた他の地区の村民も続々と集まってきました!広場には縁日も並んでいます。
そして、夜の祭がスタート!
まず披露されるのは獅子舞。
この日何度も披露されてきた獅子舞ですが、ライトに照らされ、昼間とはまた違った幻想的な雰囲気で見応えがあります!獅子舞を取り囲むギャラリーからは、歓声が飛び交いました。
そして、1日目最後のお楽しみは「南部地区芸能大会」。
村民の有志がこの日のために練習してきた一芸を披露します。
子どもたちの可愛らしい民謡から、ハイクオリティなダンス、流行を取り入れた歌唱、そして「え、あの人がこんなことをやるの…?」といった笑いを誘うパフォーマンスまで…!
堂々と演じる姿に、村民は手拍子を叩いたり、声援を送ったり、笑い転げたり…こうして祭1日目の夜は更けていくのでした。
2日目も村廻りに獅子舞、どぶろく…宴は夜深くまで
祭の2日目も、朝からスタート。行列の無事を祈る「発幸祭」が執り行われ、1日目に訪れていない2つの組の村廻りへ向かいます。そして、神社に戻ってからは、どぶろく祭のなかでも特別な神事である「例祭典」が行われました。
今回の祭の最後となる獅子舞も披露!2日間全力で舞い続けてきた獅子役者たちが、最後の力を振り絞って舞を魅せます。獅子舞の最中にはどぶろくの振る舞いも行われ、祭も佳境に。2日間に及ぶ祭も、いよいよ終わりへと向かいます。
最後は、祭の締めくくりとなる家々での宴会。普段は静かな集落に、遅くまで賑やかな笑い声がそこかしこから聞こえてくるのでした。
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さまざまな行事や祭がある白川村ですが、どぶろく祭は「この祭のために帰ってくる」「祭があるから村にUターンした」と語る人もいるほど、村民にとって特別な行事。
老若男女の村民が参加し、皆で作りあげるからこそ、思い入れが強く、こうした祭がまた村民同士の結束を一層強くしていくのでしょう。
どぶろく祭
[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南
[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点
[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面
*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください