移住2年目から「どぶろく祭」に演者として参加
2023年、コロナ禍が落ち着き4年ぶりの通常開催となったどぶろく祭。豊饒の秋に行われる白川村の一大行事です。毎年9月の終わりから10月にかけ、村内5地区(平瀬、木谷、荻町、鳩谷、飯島)で開催されます。
神に捧げられたどぶろくが人々に振る舞われる祭として知られますが、どぶろくとともに村民みんなが心待ちにしていたのは獅子舞。鳩谷(はとたに)地区の祭で太鼓を力強く叩くのは、愛知県出身の小川和也さんです。
愛知県名古屋市出身の和也さんは、高校卒業後、地元の飲食店に就職。そこで出会ったのが、白川村出身の美咲さんです。交際ののち、2017年に結婚。お二人は美咲さんの故郷・白川村へと移住しました。
「移住1年目に初めて獅子舞を見た時は観光客気分だったので、まさか自分が演じるとは思っていませんでした」と和也さん。
鳩谷地区の「獅子舞保存会」に誘われたのは、移住翌年。「ちょうどお義兄さんもUターンしたタイミングで一緒に参加したので、村民はやるものなんだな、という認識でした。参加できる人数は限られるので、昔は全員が演者になれるわけではなかったのですが、この頃鳩谷地区は若い人が少なかったのもあって、誘っていただけましたね」。
10月のどぶろく祭の1ヶ月前からは、ほぼ毎晩練習が行われ、先輩やOBから指導を受けます。
「獅子舞の踊りやリズム、メロディーは地区ごとによって違うんです。鳩谷は少しゆったりしているのが特徴ですが、僕は楽器も習ったことがなかったので、そのリズムをつかんで太鼓を叩くのが難しかったですね」。
1年目は見習いとしての参加だったため、本番での披露はありませんでしたが、2年目からは独り立ち。OBの方の指導にもより熱が入りました。
「初めて自分が演者となった祭は、多くのOBの方々が見ているとあって、とても緊張しました。村の方のどぶろく祭に対する熱量もすごいですね」。
獅子舞に携わり、いっしょに活動する仲間をはじめ、村の方とも深く関わるようになったという和也さん。6年目となった2023年の祭では、すっかり獅子舞を率いる一員として活躍していました。
移住を機に、村のインフラを支える仕事に挑戦
移住前は白川村を訪れたことがなかったという和也さん。当時、既に社会人だったとはいえ二十歳という若さだったこともあり、両親をはじめ周囲の心配もありました。
けれども、和也さんは地方の暮らしには前向きだったといいます。
「豪雪や買い物など、名古屋に比べれば不便なことも多くて初めは驚きましたが、“こういうもの”として受け止めれば、慣れるのにそれほど時間はかかりませんでしたね」。
名古屋市では飲食店で働いていましたが、「ちょうど新しい仕事にも挑戦したかった」と、移住後は美咲さんの父・正直さんが経営する丸正建設株式会社へ転職。未経験からスタートし、初めは先輩につきながら少しずつ経験を積み重ねました。
もちろん、重機の運転に必要なさまざまな免許も取得。春から秋は道路建設、冬は除雪にと、村内外をとびまわります。
「大変なこともありますが、自分が携わった仕事が、村民や多くの人の暮らしに役立つのは嬉しいですね」。
今では後輩もでき、現場監督も任されるほどとなっています。
自分らしく、村の暮らしを家族とともに育んでいく
現在は二人のお子さんに恵まれ、地域の方に支えられながら子育てに励む和也さんと美咲さん。
「近所の方は子どものことをみんな知っているので、可愛がってくれます。見守られている安心感がありますね」。
子育てするにようになり、人付き合いが濃い村の良さも改めて感じています。
「消防団にも入って、仕事に、地域の活動にとなかなか毎日忙しいです。なので“のんびり田舎暮らし”とはいかないですけれど、自然に囲まれて、村の一員としての実感を持ちながら過ごす今の生活を僕は気に入っています」。
村の暮らしに自然体で馴染むんでいる和也さん。最近は念願だった野菜づくりも始め、白川村での生活の新たな楽しみを見つけています。
小川和也さん
愛知県名古屋市出身。白川村出身の美咲さんと名古屋市の職場で出会い、2017年に結婚を機に移住。現在は義父が営む「丸正建設株式会社」に勤める。