心から安心できる子育て環境を求めて。
茅葺き屋根に手作りの立看板、ふわりと漂う香ばしいコーヒーの香り。2021年10月、白川村荻町の南端に、コーヒーとミートパイが自慢の小さなカフェがオープンしました。「サウスサイドカフェ」の暖簾を潜るとはつらつとした笑顔で出迎えてくれるのは清水朋恵さんです。
朋恵さんは愛媛県出身。カナダの大学を卒業後、転勤で東京、京都、大阪などを転々とし、2019年に長男・泰良(たいら)くんを出産して間も無く、安心できる子育て環境を求め、ご主人の故郷である白川村へ移り住むことを決めました。
「大阪で子育てを始めましたが、都会は周りの家が近いので、夜泣きをすれば気を遣うし、知り合いもいなくて、この環境では到底子育ては続けられないと思ったんです。私は退職していて、夫はフルリモートできる仕事だったので、スムーズに移住を決断できました」。
ご主人の実家の車庫を住まいにリノベーションし、2020年11月には新しい生活をスタート。泰良くんは白川村の雄大な自然のなかで、すくすくとのびやかに成長しています。
移住者でも、村中が親戚のよう。
「白川村では子育てに対する安心感が、都会とは全然違いますね。村中が親戚みたいで、本当に助けられています」。
幼いながらも、顔立ちがご主人にそっくりだという泰良くん。散歩中に、「清水さんの子かな?」と近所の方から声を掛けられることもあり、泰良くんが思いがけず、地域と朋恵さんとをつないでくれています。
「移住者でも、疎外感を感じずにいられるのは息子のお陰です。村の方は私のことは知らなくても、この子がいるから声を掛けてくれることもあると思うんです」。
もちろん、車で往復40分の保育園への送り迎えや、近所に大きなスーパーがないことなど、都会に比べれば不便なこともあります。しかし、それ以上に地域に見守られているという安心感が朋恵さんの子育てを日々支えているのです。
移住前に培った強みを活かし、踏み出した新たな挑戦。
白川村での子育ての安心感から、気持ちに余裕が生まれた朋恵さんは新しい挑戦に踏み出すことに。もともと、ご主人の両親が物置にしていた茅葺き屋根の小屋を改装して、念願のカフェを開きたいと相談。
ご主人と両親の温かいサポートで、移住からおよそ1年後には物置だった小屋が、週末限定のカフェに生まれ変わりました。当初、ターゲットは観光客でしたが、地域の方も多く立ち寄ってくれていることがとても嬉しいという朋恵さん。一住民として暮らしているだけでは出会えなかった地域の方とも出会えています。
「今まで出張の多い生活をしていて、各地でカフェで過ごす時間に癒されてきました。人としゃべることも、ものをつくることも好きなので、自分の好きなことで村民や観光客のみなさんに喜んでもらえれば」。
ミートパイや焼き菓子はもちろん、ロゴや紙カップに押しているスタンプも全て朋恵さんの手作りです。そして、今後の目標は、カナダへの留学で培った得意の英語を活かし、外国人観光客にガイドブックの情報では伝わらない「白川郷の本当の良さを伝える」ということ。村民同士、地域と移住者、そして観光客。朋恵さんの強みと想いが詰まったサウスサイドカフェは、白川村の新たな〝ハブ〞としてさまざまな人と人とをつないでいます。
サウスサイドカフェ
住所/岐阜県大野郡白川村荻町2708-1
営業時間/10:00-15:30(金土日のみ)臨時営業あり
Instagram/@southsidecafe___shirakawago