白川村で毎年6月第2日曜に開催される「白川村消防操法大会」。村の消防団員たちは、この大会に向け毎年5月中旬から約4週間、平日はほぼ毎夜訓練を行います。
今回は大会直前に行われるリハーサルである、「審査会」の様子を取材させていただきました!
この日はあいにくの雨でしたが、会場である寺尾の村防災グラウンドにはたくさんの消防団員が集まっていました。
村内の消防団は9チーム。この日の審査会にはそのうち4チームが参加し、順番に消防技術の審査を行います。白川村で消防団員となるのは、主に20〜40代の男性。チームごとに人数はさまざまですが、多いと10人程度、少ないと5人ほどのチームもあります。
消防ポンプ操法には、消防ポンプ自動車(消防車の代表的なもの)を使う「ポンプ車操法」と、持ち運び可能な小型動力ポンプを使う「小型ポンプ操法」の2種類があり、チームごとにどちらの操法を行うかが決まっています。
最初に始まったのは、ポンプ車操法の審査会。
ポンプ車に乗り込んだ団員たちが定位置で車を降り、整列。出場選手はゼッケンをつけていて「指」は指揮者、「1」「2」「3」「4」は1番員、2番員、3番員、4番員、「補」は吸管補助員とそれぞれ役割が決まっています。
点呼が終わると指揮者は「ただいまからポンプ車操法を開始します」と審査班長に報告。
さらに「火点は前方の標的、水利はポンプ車右側後方防火水槽……」と、火元や水のある場所を伝える号令を続け、「操作始め!」の号令で計測がスタートします。
まずは、ポンプ車に乗り込み、一連の動きを行ってから、ポンプ車から降りて消火活動へ!
3番員と4番員が吸水管(水槽の水を吸い上げるホース)をポンプと接続し、水槽へとつなげます。吸管補助員は、吸水管がしっかりと水槽から水を吸い上げられているかを確認。
その間、指揮者、1番員、2番員は「火」と書かれた標的までの約70メートルを全力でダッシュ!ホースを素早く引き伸ばします。1番員はホースの先端の器具をつなげ、準備完了。1番員から「放水始め」と伝えられた2番員は、先ほど走った道のりを再び走り、機械を操作をする4番員の元へ。
放水開始です!
入れ違いに3番員は火災時に窓やドアを破って放水するために使う「トビ口」を運び、操作します。そして2番員も、1番員の負担を軽減するため再び標的まで走り、放水。
懸命な消火活動により、見事標的が倒れました!消火活動はこれで終了です。
計測はここまでですが、最後の片付けまで審査に含まれます。迅速かつ規律を守りながら、ホースを片付け、ポンプ車に戻り、撤収していきます。
こちらは「小型ポンプ操法」の訓練。ポンプ車に乗り込む以外は概ね同じ流れですが、指揮者と1番員〜3番員、吸管補助員の4名で行います。
団員たちは、グラウンド中に響くほどの大きな声を威勢よく出し、きびきびと動き、全力でグラウンドを走り回ります。ここまでの一連の動きを身につけるには、確かに相当な練習が必要です。
今年入団した中部第1班の小洞(こぼら)琢摩さんは「まずは姿勢や敬礼や、団体行動の基本から覚えました。覚えることがたくさんあり大変ですが、普段は関わらない方と交流できておもしろいです」と語ります。
白川村消防操法大会で活躍する小洞さん(1番員)
白川村の消防団はレベルが高く、岐阜県の大会で優勝したこともあります。また2022年に荻町の「白川郷の湯」で火災が発生した際は、村内すべての消防団員が集結し、決死の消火活動を行いました。
合掌造り集落では一たび火災が発生すると集落が全焼してしまう恐れもあり、消防団の存在は合掌造りの家屋を維持していくためにも不可欠です。
さらにこうした連日の訓練のおかげもあって村民同士のコミュニケーションが図られ、移住やUターンで村に住み始めた人がコミュニティに入るきっかけにもなっています。
一方で、団長の下方健弘(したかたたけひろ)さんは「今は、家族の在り方やライフスタイルが多様化しているから、白川村でも時代に合わせたやり方を考える必要があるね」と課題も語ってくれました。
時代の流れに合わせながらも、村を火災から守る消防団の活動は、今後も大切な役割を果たしていくことでしょう。