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2021.11.15

地域のために、今できることを。/一般社団法人白川村ローカルアームズ 坂本磨紀さん


2021年4月、一時は存続が危ぶまれた「さくら街道白川郷ひらせ温泉キャンプサイト」が、春の訪れとともにリニューアルオープンを迎えました。キャンプサイトの引き継ぎに手を挙げたのは、一般社団法人ローカルアームズの坂本磨紀さん。家業の美容院を営む傍ら、未経験の分野に果敢にチャレンジし、村に新風を吹かせています。

名古屋での美容師時代を経て、地元にUターン。

「僕、10代の頃から美容師をやっていて、キャンプのことは素人なんです」。薪割り機の手入れをしながら、快活な笑顔で話す坂本磨紀さんはキャンプサイトからほど近い白川村平瀬地区の出身。

実家は「HAIR SALON SAKAMOTO」を営んでおり、4代目にあたります。美容師は身近な存在だったものの、中学生の頃は全く興味がなく、経営者になりたいという漠然とした思いから高山市の高校の商業科へ。「なぜ経営者になりたいのかは自分でもわかってなくて。結局、当時流行っていた美容師の道を選んだんですよね」。

名古屋の専門学校卒業後は、名古屋市内で美容師として働き始めます。美容師としての日々は充実しておりコンテストで入賞するほどの腕前に。しかし、坂本さんはあることに気がつきます。それは美容室には高齢のお客さんは足を運ばないということ。その時、HAIR SALON SAKAMOTOの常連の顔が頭をよぎり3年間にわたって、休日返上で通信制の専門学校に通い理容師の資格を取得しました。

その後も仕事に没頭しストイックな生活を送っていた坂本さんの身体は限界に。心臓の不調でそれまでのように仕事を続けることが難しくなります。同じ頃、父親が亡くなり、人生はいつ終わるかわからないことを身をもって感じた26歳の坂本さんが選んだのは地元に戻ることでした。

村の人の思いを継いで、地域のためになることを。

Uターンしてからは家業を継いでハサミを握り、地域の方と親交を深めるようになった坂本さん。「地域のため」を意識するようになったきっかけは、年配のお客さんが口を揃えて言う「地域のためになることをしてほしい」という思いでした。その思いを受け継ぎ、かたちにすることが何よりものモチベーションになっています。「明日どうなるか分からないから今日やる。ただただ、その積み重ねですよね」。

地域のために何ができるか。考えた末に会社設立を検討していた坂本さんのもとにキャンプサイトの運営を引き継ぐ話が舞い込んできます。平瀬地区では保育園の統合やスキー場の閉鎖が相次ぎ、地域の衰退に歯止めがかからない状況で、キャンプサイトも閉鎖の決断を迫られていました。

「最初は会社をつくって農業で雇用を生もうと思っていました。でも、まずは目の前にある課題を解決しようと手を挙げたんです」。一部では上手くいくわけがないという声も上がるなか、地域の人々の協力もあって、2020年12月「一般社団法人白川村ローカルアームズ」を設立、翌4月にキャンプサイトの再開に漕ぎ着けたのです。

子どもたちが帰れる村に。

坂本さんは村の少年野球チームの指導もしています。「子どもたちに将来帰って来いよと言っても、今の村には帰る場所(仕事)がないんですよね」。坂本さんが目指すのは子どもたちが帰れる村をつくること。そのために、まずはキャンプサイトを軌道に乗せて若い世代を雇うことが目標です。

「村の衰退は想像以上のスピードで進んでいて、残された時間は10年もありません。だから、本来は5年かかることを3年で、3年かかることを1年で成し遂げないといけない」。そう語る坂本さんは常に10年後の村の未来を見ています。挑戦はまだ始まったばかり。今、一番必要なのは思いを共に前進する仲間です。 “ローカルアームズ”の社名の通り、地域の色々な人の手を借りながら、“日々、今日できること”を地道にこつこつ積み重ねていきます。

さくら街道白川郷ひらせ温泉キャンプサイト

問い合わせ/090-1782-0455 平日9:00 – 17:00

住所/岐阜県大野郡白川村大字長瀬字あまちの上766-1

HP/https://hirase-camp.com/

Instagram/@hirase.camp.site

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