どぶろく – 飛騨日日新聞 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi 飛騨日日新聞は白川村での暮らしや文化、 そこに生きる村民のストーリーを届けるメディアです。 Fri, 15 Dec 2023 07:07:32 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.4 【郷暮らし手帖】平瀬どぶろく祭(後編) https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/hirasedoburoku2023_02/ Tue, 21 Nov 2023 11:59:54 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=4264 2023年9月25日、26日に白川村南部の平瀬地区でどぶろく祭が開催されました!

豊饒の秋に行われる白川郷の一大行事「どぶろく祭」。御神幸、獅子舞、民謡、舞踊などの神事が行われるとともに、神に捧げられたどぶろくが人々に振る舞われます。

そんなどぶろく祭は今年、4年ぶりの通常開催!

この記事では、観光客が多い地区のお祭りとは一味違う、“村民のための祭”の色が濃い、平瀬地区のどぶろく祭の様子を前後編でお届けします。

迫力ある獅子舞の披露!

2日間に渡って行われる平瀬地区のどぶろく祭。朝から平瀬八幡神社で神事を執り行い、午後からは村廻りで各組を巡りました。

そして、神社に戻ってから行われるのが還幸祭です。

神社には、平瀬地区の村民はもちろん、他の地区の村民、村外からの参拝者が獅子舞やどぶろくを待ち侘びていました。

どぶろくの振る舞いのため、ござを敷いて準備します。

そしていよいよ獅子舞奉納がスタート!村廻りでも一部の演目が行われましたが、この獅子舞奉納では全ての演目が披露されます。

白川村の獅子は4人の男性が舞い手となり、8本足となる「百足獅子」と呼ばれていて、全国的にも珍しい形態となっています。演目は各地区で異なり、平瀬地区では10の演目から成ります。各演目の始まりには、どんな場面の舞なのかの説明があるので、初めて見る人でもストーリーと共に楽しめます。

まずは獅子だけの演目。前後左右に移動するだけでなく、上下にも激しく、猛々しく乱舞します!舞い手の4人の息がぴったり合って、まるで本当に生きているかのようです!

笛や太鼓の音色も、境内に響きます。

演目が進むと、獅子に立ち向かう「ハナトリ」が登場!剣や「ザイ」といった道具を手に、力強く獅子と戦います。

ハナトリ(シシトリとも呼ばれます)を務めるのは、小学生から中学生の少年。一度役に就くと、引退の年齢までは同じ子が役を担い続けます。ハナトリになれるのは地区の中でも2人だけなので、幼い頃から獅子舞を見ている村の子どもたちにとっては、憧れの存在です。

今回大役を務めた2人も幼い頃からハナトリに憧れ、今年、念願のデビューとなりました。

1か月ほど稽古に明け暮れ、祭の前は「少し緊張する」と話していた二人ですが、果敢に、華麗に獅子に挑む姿には、思わず息を飲んで見入ってしまいます!

参拝者は声援をかけたり、拍手を送ったり、おひねりを投げ入れたりしながら、その力強い舞を楽しんでいました。

ここでしか味わえない、貴重などぶろくの振る舞い

獅子舞の演目の途中には「どぶろくの儀」が執り行われ、どぶろくの振る舞いもスタート!

獅子舞を見守っていた観客たちが、一気にゴザに腰を下ろします。どぶろくを注ぐのは、割烹着を着た女性や、法被を着た男性。

そして待ちに待ったどぶろくが、盃に注がれます…!

氏子が杜氏を担い、各地区で醸されるどぶろく。祭礼用に特別に作ることを許可された非売品なので、味わうことができるのは、このどぶろく祭だけ。献燈料を収めると入手できる盃で、いただくことができます。

さて、今年のお味は…?

平瀬地区のどぶろくは他の地区と比べて辛いのが特徴ですが、今年は飲み口がまろやか!後から辛みがじんわりと広がります。

「今年の出来は最高!」という杜氏さんの言葉通り、気がつくと何杯も飲んでしまいたくなるおいしさです…!

村外からの参加は少ない平瀬のどぶろく祭ですが、今年は体感として参拝者の数は4年前の1.5倍ほど。それだけ、このどぶろくを楽しみにしていた人がたくさんいるのだとわかります。

獅子舞を眺めながら、どぶろくを味わい、周りの人と語らって…これぞ祭!というような賑やかな時間が流れていきます。

さらに、獅子舞が終わると、どこからともなく民謡の歌声や四竹のおはやしが聞こえ、さっきまでどぶろくを楽しんでいた村民の民謡が始まります。この日のために帰省した懐かしい顔ぶれもいっしょに踊り出し、大盛り上がり!平瀬地区ならではの“みんなでつくる”アットホームな雰囲気で還幸祭は締めくくられました。

老若男女が一芸を披露。どぶろく祭は夜も楽しい

還幸祭が終わると、時間はすっかり夕暮れ。村外からの参拝者のほとんどは帰路につきますが、村民の楽しみはまだまだこれからです。

夜も祭は続きますが、まずは宴会!祭の夜は地区の家々でごちそうが振る舞われます。この日お邪魔したお宅では、山菜やアマゴがふんだんに使った料理が並んでいました。どぶろく祭の日は、村を出た出身者も帰郷する人が多く、親戚や近所の人、友人が集まって食事をします。

宴会を終えると、神社の前にある広場へ。

学校や仕事を終えた他の地区の村民も続々と集まってきました!広場には縁日も並んでいます。

そして、夜の祭がスタート!

まず披露されるのは獅子舞。

この日何度も披露されてきた獅子舞ですが、ライトに照らされ、昼間とはまた違った幻想的な雰囲気で見応えがあります!獅子舞を取り囲むギャラリーからは、歓声が飛び交いました。

そして、1日目最後のお楽しみは「南部地区芸能大会」。

村民の有志がこの日のために練習してきた一芸を披露します。

子どもたちの可愛らしい民謡から、ハイクオリティなダンス、流行を取り入れた歌唱、そして「え、あの人がこんなことをやるの…?」といった笑いを誘うパフォーマンスまで…!

堂々と演じる姿に、村民は手拍子を叩いたり、声援を送ったり、笑い転げたり…こうして祭1日目の夜は更けていくのでした。

2日目も村廻りに獅子舞、どぶろく…宴は夜深くまで

祭の2日目も、朝からスタート。行列の無事を祈る「発幸祭」が執り行われ、1日目に訪れていない2つの組の村廻りへ向かいます。そして、神社に戻ってからは、どぶろく祭のなかでも特別な神事である「例祭典」が行われました。

今回の祭の最後となる獅子舞も披露!2日間全力で舞い続けてきた獅子役者たちが、最後の力を振り絞って舞を魅せます。獅子舞の最中にはどぶろくの振る舞いも行われ、祭も佳境に。2日間に及ぶ祭も、いよいよ終わりへと向かいます。

最後は、祭の締めくくりとなる家々での宴会。普段は静かな集落に、遅くまで賑やかな笑い声がそこかしこから聞こえてくるのでした。

***

さまざまな行事や祭がある白川村ですが、どぶろく祭は「この祭のために帰ってくる」「祭があるから村にUターンした」と語る人もいるほど、村民にとって特別な行事。

老若男女の村民が参加し、皆で作りあげるからこそ、思い入れが強く、こうした祭がまた村民同士の結束を一層強くしていくのでしょう。

どぶろく祭

[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南

[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点

[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面

*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください

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【郷暮らし手帖】平瀬どぶろく祭(前編) https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/hirasedoburoku2023_01/ Mon, 13 Nov 2023 03:04:30 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=4155 2023年9月25日、26日に白川村南部の平瀬地区でどぶろく祭が開催されました!

ここ数年はコロナ禍で中止や縮小となっていたため、通常開催となったのは実に4年ぶり。その分、多くの村民がこの日を心待ちにしていました。

そもそも、どぶろく祭とは?

五穀豊穰や家内安全、里の平和を山の神様に祈願する「どぶろく祭」。「天下の奇祭」とも言われ、毎年9月の終わりから10月にかけて、村内5地区(平瀬、木谷、荻町、鳩谷、飯島)で開催されます。

神に捧げられる「どぶろく」が村民や参拝者に振る舞われ、これを目当てに訪れる観光客も多いんです。

*どぶろくについて取材した記事はこちら
【郷暮らし手帖】どぶろくの徳利詰め

【郷暮らし手帖】どぶろくの仕込み

どぶろく祭は、白川村民にとってお盆や正月よりも重要と言っても過言ではない行事。自分が住む地区や、演者として参加する地区の祭の日には、子どもたちは白川郷学園(白川村唯一の学校)も公欠扱いで休むことができます。村外に出た人の多くも、この日に合わせて帰省します。

そんなどぶろく祭の中でも、平瀬地区は観光客が多い荻町、鳩谷、飯島と比べると、より「村民の祭」の色が強いのが特徴。今回は、そんな平瀬どぶろく祭の様子を前後編に分けてお届けします!

朝の神事から祭はスタート

祭は各地区ごとに開催期間が1〜2日と決まっていて、平瀬地区では2日間開催されます。

スタートは朝9時ごろ。

獅子役者や稚児をはじめ、役を持った村民が平瀬八幡神社に集まります。氏子全員が集まるわけではないのですが、地区の人口が少なくなっている近年、何かしらの役を持つ人が多くなっています。

初めに行われるのは、試楽祭。

神社の本堂で、神主さんたちを中心にお浄めの儀式が行われます。管楽が響く中、厳かに神事が進みます。

ここでは2人の稚児による舞も披露。扇や鈴を手に、初々しくも優雅に舞う姿に、観客は思わず目を細めます。

稚児は、通常小学生〜中学生の女の子が務めますが、この日は高校生も参加。当日は、早朝から稚児のお母さんたちが支度を手伝い、娘の晴れ舞台を支えていました。

村廻りで各組へ練り歩き

試楽祭を終えると、村廻り(ご神幸行列)へ。

獅子役者や稚児、御輿、カラフルな吹き流しをもった旗持ちなどが列を成して、地区内の各組を廻ります。

山の緑を背景に色鮮やかな行列が巡っていく様子は、なんとも華やかです!

獅子役者の太鼓や笛の音色で、祭の気分がよりいっそう高まります。

村廻りでは、各組が設えた祭壇で神事が行われます。この祭壇も、早朝から各組の村民が準備していました。

ご祈祷が終わると、獅子舞も披露!

メインの舞は村廻りを終えてから神社で行われますが、各組でも獅子舞の演目の一部が行われます。

通りの真ん中で踊る姿は、境内で催される舞とはまた違う面白さがあります!村民はもちろん、たまたま訪れていた観光客も思わず足を止めていました。

そしてこちらは…民家に獅子舞が押し入ってます!

「舞い込み」とよばれるこの儀式は、獅子役者たちに御花(金銭)を包んだ家や企業に、無病息災を祈って行われます。

獅子舞がずんずんと家の中に進んでいく姿は、初めて見ると少しびっくりしてしまいますが、ご利益があるものなのです。

***

こうして1日目は8組を巡り、行列は午後3時ごろには神社へ。この後はいよいよ、獅子舞奉納とどぶろくの振る舞い。

※後編記事公開後、閲覧いただけます。

どぶろく祭

[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南

[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点

[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面

*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください

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【郷暮らし手帖】どぶろくの仕込み https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/doburokushikomi/ Wed, 15 Feb 2023 06:59:13 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=2907 雪がしんしんと降り続く1月。白川村では、豊饒の秋を祝って行われる行事「どぶろく祭」に向けた、どぶろく造りの「仕込み」が始まります。

「天下の奇祭」として知られ、どぶろくの振る舞いを楽しみに毎年多くの観光客が訪れるどぶろく祭。祭りの主役となるどぶろくの担い手は、村民です。今回は10月のどぶろく祭に向けた始まりとなる、「どぶろくの仕込み」を取材させていただきました!

*「どぶろくの徳利詰め」について取材した記事はこちら

***

取材に訪れたのは、村内の5つの地区(荻町、鳩谷、飯島、平瀬、木谷)で行われるどぶろく造りのうち、白川村役場や白川郷ICがある鳩谷(はとたに)地区。毎年、鳩谷地区の仕込みは大寒に行われ、2023年は1月27日(金)〜29日(日)の3日間で実施されました。

場所は、鳩谷八幡(はとがやはちまん)神社の奥の蔵。どぶろく造りの最高責任者である杜氏さんと、今年の「鍵取り(神社当番)」(鳩谷八幡神社の鍵を預かり、神社の管理を行う組。輪番制で担当する)の上組の村民など、13人が集まりました。

初日は朝早くから集まり、3日間の段取りを確認してから、米洗(こめあらい)を行います。鳩谷地区では飛騨地方産の酒米を使いますが、その量はなんと1000キロ以上!どぶろく用に精米されているので、お米を炊く時の米とぎよりも軽く、やさしく洗うのがポイントです。

そして、2日目と3日目はなんと夜明け前からお米を蒸す作業が行われます。

取材に伺ったのは、最終日の3日目。積み上げられたせいろでは、次々とお米が炊き上がっていました。

炊き上がったお米を台の上に広げて、手でほぐして、冷めるのを少し待って…。この作業を何度も繰り返します。お米を台にあげる瞬間には、湯気がたちこめてカメラのレンズが曇るほどの熱気です!

ある程度の量の蒸し米が台上に広げられたら、麹(こうじ)を入れてさらに混ぜます。

麹がよく混ざったら、再びせいろやコンテナに入れて、ここから数ヶ月どぶろくを発酵させていくためのタンクに移していきます。

杜氏さんや鍵取りの村民は、お米を蒸す人、蒸し上がったお米を台にあげて冷ます人、タンクに米を移す人などに役割分担して作業。わきあいあいと話しながら手を動かし、作業が進んでいきます。

***

白川村でどぶろく造りを担う杜氏さんは、基本的には次の代に引退となるまで長年勤めあげます。鳩谷地区では沢田浩志(ひろし)さん、下方健弘(したかたたけひろ)さんの2人の杜氏さんがどぶろく造りを務めます。そのうちの一人、下方さんにお話を伺いました。

沢田さんと下方さんがどぶろくの杜氏となったのは10年以上前。杜氏を継ぐ話を持ちかけられた当初は、その責任の重さから、下方さんはすぐに前向きな気持ちにはならなかったと言います。

それでも杜氏の役割を引き受けようと思ったのは、伝統を守っていきたいと思ったから。

「毎年、どぶろくを楽しみにしてくれている人がたくさんいて、これを絶やすわけにはいかないからね」。

近年は長年の経験が積まれたことで、比較的安定してどぶろくが作られるようになったそうですが、どぶろく造りは容易ではありません。

「赤んぼうと一緒で、目が離せないんです。状態が悪くなってしまうんですよ。だから常に目を光らせないといけないですね。鳩谷のどぶろくとして、安定したおいしさを目指しつつ、毎年よりよいものを造っていきたいです」。

明け方前から続いた仕込みの作業は、夕方前には終了。作業自体は複雑なものではないですが、3日間早朝から重いお米を運んだり、かき混ぜたりと作業が続いたため、参加した皆さんはかなりお疲れの様子でした。

けれども、どぶろく造りの本番はここから。仕込みが始まってからの数ヶ月は、杜氏さんは自分の本業の仕事をしながら、タンクに入ったどぶろくの状態を毎日確認します。その甲斐あって、おいしいどぶろくができあがるのです。

鳩谷地区のどぶろくは、村内で造られるどぶろくの中でも、ちょうど中間くらいの度数だといいます。

ここ数年は感染症対策のためどぶろく祭でのどぶろくの振る舞いは行われていませんが、今年の秋こそは、村民の想いが込められたどぶろくの味を、多くの人といっしょに味わいたいですね。

どぶろく祭

[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南

[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点

[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面

*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください

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【郷暮らし手帖】どぶろくの徳利詰め https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/doburoku-tokkuridume/ Tue, 22 Nov 2022 06:21:42 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=2286 白川村で9月の終わりから10月にかけて、村内5地区で行われる行事「どぶろく祭」。豊饒の秋を祝う、「天下の奇祭」とも言われる歴史と伝統あるお祭りで、神に捧げられる「どぶろく」が人々にも振る舞われます。

その主役となるどぶろくを村民や来訪者に提供できる形にするのが「どぶろくの徳利詰め」です。

新型コロナウイルスの影響から、ここ数年どぶろく祭は振る舞いの中止を余儀なくされていますが、この徳利詰めは毎年欠かさず行われています。

今回取材に伺ったのは、世界遺産白川郷合掌造り集落がある白川村荻町地区。

毎年10月14日、15日にどぶろく祭が開催される荻町地区では、祭りを数日後に控えた平日の晩、3日間かけて徳利詰めを行います。

場所は、白川八幡神社の脇にある建物です。

参加するのは、氏子総代(うじこそうだい)、今年の「鍵取り」(白川八幡神社の鍵を預かり、神社の管理を行う。荻町内の7つに分けられた組が輪番制で担当する)の西下組の村民、そしてどぶろく造りを任う、酒造りの最高責任者である杜氏さんです。

参加者の皆さんが仕事を終えた夕方6時半から、徳利詰めは始まります。

総勢16人ほどが役割を分担し、手際良く作業されています。

徳利を箱から出す人、徳利に成分表のシールを貼る人、タンクから徳利にどぶろくを詰める人、専用の器具で徳利の栓を閉める人、外箱を組み立てる人、箱詰めする人、箱を段ボールに詰めていく人…。

和気あいあいとコミュニケーションを取りながら、次々とどぶろくに満たされた徳利が箱詰めされたダンボールが積み上がっていく様子は、まるでこれも一つのお祭りのような活気に満ちています。

今年の荻町のどぶろく祭では振る舞いが行われないため、平時の9900本より少ないそうですが、それでも8500本もの数になるそう。初日だったこの日のノルマは2800本ほどです。

現在杜氏を務めるのは、野谷信二(のだにしんじ)さんと川田晋也(かわだしんや)さん。

白川村でどぶろく造りを担う杜氏さんは、基本的には引退となるまで長年勤めあげます。お二人は前任者から声をかけられ、同時期に杜氏となり、以来10年以上荻町のどぶろく造りを任されているのです。

野谷信二さん

どぶろく造りが始まるのは、1月半ば。荻町では3日間かけて「鍵取り」となった組の村民と共に、洗米と米を蒸す「仕込み」を行います。その後数ヶ月は、毎日早朝や仕事を終えた夕方に、タンクに入った米と麹、水をかき混ぜます。

「仕込んだばかりは米がすぐ水に浮いてきてしまうので、それが均一に混ざるようにかき混ぜます。米が水を吸って重く、固くなっているので、なかなかの重労働ですね」と野谷さん。

川田晋也さん

発酵が進むとまず現れるのは荒い気泡。それを毎日かき混ぜていくと次第に細やかな気泡に変わっていきます。

こうして、どぶろくが出来上がるのは夏頃。この時期になると、温度調整ができるサーマルタンクにどぶろくを移し、数日おきに様子を確認して徳利詰めの時を待ちます。

白川村でどぶろく造りを担う杜氏さんは、仕事としてどぶろく造りを任されているわけでなく、地域の奉仕活動にあたる取組みとして活動されています。お二人も杜氏となるまでは酒造りは未経験でした。

前任者が当初苦労した経験からデータをまとめ、それを引き継がせてくれたお陰でずいぶんやりやすかったとお二人は語りますが、それでも、別の仕事をしながらどぶろくを造り続けるのは容易なことではありません。

「1年のほとんど、どぶろくのことを気をかけているのはなかなか大変ですね。仕込みをしたばかりのタンクをかき混ぜるときは、何年たっても緊張します。菌によってどぶろくの出来は左右されるので、仕込み前から徳利詰めが終わるまで、麹菌よりも強い菌を持つ納豆は食べられないんですよ」と川田さん。

そんな苦労があっても、毎年村民や、どぶろく祭に訪れる村外の方が楽しみにしているどぶろく造りに携わっているという喜びは大きいそう。荻町のどぶろくは、毎年安定して「甘くて滑らかで飲みやすい」と評判です。

「昔からどぶろく祭が好きで。一時期村外にいたんですが、どぶろくがなかったら村に戻って来なかったと思います。毎年この時期に、みんなができあがったどぶろくを飲んで“今年もうまいな”って言ってくれるのが本当に嬉しいし、苦労して作る甲斐があるなと思います」と川田さん。

そして、杜氏さんがどぶろく造りの中心を担いながらも、徳利詰めや仕込みは地域の“結”の力が欠かせません。

「私たち二人だけでは、とてもどぶろく造りの全ての作業を行うことはできないです。地域の皆さんとの協力でできあがります。“結”があってこそ、毎年おいしいどぶろくができるんです」。テキパキと作業を続ける地域の方々の姿を見ながら、そう語ります。

***

残念ながら2022年の荻町のどぶろく祭は神事のみの催行となり、参拝者や遠来の客へのどぶろくの振る舞いは行われませんでした。そんな年であっても、どぶろく造りと徳利詰めは毎年続きます。

来年こそは、村民の力が結集したどぶろくをおいしくいただきたいですね。

どぶろく祭

[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南

[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点

[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面

*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください

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