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2023.02.15

【郷暮らし手帖】どぶろくの仕込み


雪がしんしんと降り続く1月。白川村では、豊饒の秋を祝って行われる行事「どぶろく祭」に向けた、どぶろく造りの「仕込み」が始まります。

「天下の奇祭」として知られ、どぶろくの振る舞いを楽しみに毎年多くの観光客が訪れるどぶろく祭。祭りの主役となるどぶろくの担い手は、村民です。今回は10月のどぶろく祭に向けた始まりとなる、「どぶろくの仕込み」を取材させていただきました!

*「どぶろくの徳利詰め」について取材した記事はこちら

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取材に訪れたのは、村内の5つの地区(荻町、鳩谷、飯島、平瀬、木谷)で行われるどぶろく造りのうち、白川村役場や白川郷ICがある鳩谷(はとたに)地区。毎年、鳩谷地区の仕込みは大寒に行われ、2023年は1月27日(金)〜29日(日)の3日間で実施されました。

場所は、鳩谷八幡(はとがやはちまん)神社の奥の蔵。どぶろく造りの最高責任者である杜氏さんと、今年の「鍵取り(神社当番)」(鳩谷八幡神社の鍵を預かり、神社の管理を行う組。輪番制で担当する)の上組の村民など、13人が集まりました。

初日は朝早くから集まり、3日間の段取りを確認してから、米洗(こめあらい)を行います。鳩谷地区では飛騨地方産の酒米を使いますが、その量はなんと1000キロ以上!どぶろく用に精米されているので、お米を炊く時の米とぎよりも軽く、やさしく洗うのがポイントです。

そして、2日目と3日目はなんと夜明け前からお米を蒸す作業が行われます。

取材に伺ったのは、最終日の3日目。積み上げられたせいろでは、次々とお米が炊き上がっていました。

炊き上がったお米を台の上に広げて、手でほぐして、冷めるのを少し待って…。この作業を何度も繰り返します。お米を台にあげる瞬間には、湯気がたちこめてカメラのレンズが曇るほどの熱気です!

ある程度の量の蒸し米が台上に広げられたら、麹(こうじ)を入れてさらに混ぜます。

麹がよく混ざったら、再びせいろやコンテナに入れて、ここから数ヶ月どぶろくを発酵させていくためのタンクに移していきます。

杜氏さんや鍵取りの村民は、お米を蒸す人、蒸し上がったお米を台にあげて冷ます人、タンクに米を移す人などに役割分担して作業。わきあいあいと話しながら手を動かし、作業が進んでいきます。

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白川村でどぶろく造りを担う杜氏さんは、基本的には次の代に引退となるまで長年勤めあげます。鳩谷地区では沢田浩志(ひろし)さん、下方健弘(したかたたけひろ)さんの2人の杜氏さんがどぶろく造りを務めます。そのうちの一人、下方さんにお話を伺いました。

沢田さんと下方さんがどぶろくの杜氏となったのは10年以上前。杜氏を継ぐ話を持ちかけられた当初は、その責任の重さから、下方さんはすぐに前向きな気持ちにはならなかったと言います。

それでも杜氏の役割を引き受けようと思ったのは、伝統を守っていきたいと思ったから。

「毎年、どぶろくを楽しみにしてくれている人がたくさんいて、これを絶やすわけにはいかないからね」。

近年は長年の経験が積まれたことで、比較的安定してどぶろくが作られるようになったそうですが、どぶろく造りは容易ではありません。

「赤んぼうと一緒で、目が離せないんです。状態が悪くなってしまうんですよ。だから常に目を光らせないといけないですね。鳩谷のどぶろくとして、安定したおいしさを目指しつつ、毎年よりよいものを造っていきたいです」。

明け方前から続いた仕込みの作業は、夕方前には終了。作業自体は複雑なものではないですが、3日間早朝から重いお米を運んだり、かき混ぜたりと作業が続いたため、参加した皆さんはかなりお疲れの様子でした。

けれども、どぶろく造りの本番はここから。仕込みが始まってからの数ヶ月は、杜氏さんは自分の本業の仕事をしながら、タンクに入ったどぶろくの状態を毎日確認します。その甲斐あって、おいしいどぶろくができあがるのです。

鳩谷地区のどぶろくは、村内で造られるどぶろくの中でも、ちょうど中間くらいの度数だといいます。

ここ数年は感染症対策のためどぶろく祭でのどぶろくの振る舞いは行われていませんが、今年の秋こそは、村民の想いが込められたどぶろくの味を、多くの人といっしょに味わいたいですね。

どぶろく祭

[白川八幡宮]10月14日~15日:荻町合掌造り集落南

[鳩谷八幡神社]10月16日~17日:R156白山白川郷ホワイトロード入口交差点

[飯島八幡神社]10月18日~19日:道の駅白川郷正面

*毎年の開催状況は白川村役場のWEBサイトをご覧ください

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