座談会 – 飛騨日日新聞 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi 飛騨日日新聞は白川村での暮らしや文化、 そこに生きる村民のストーリーを届けるメディアです。 Tue, 26 Mar 2024 01:45:07 +0000 ja hourly 1 https://wordpress.org/?v=6.4.4 【座談会/移住ってどう?】移住者から見る、村の観光 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou08/ Tue, 26 Mar 2024 01:45:06 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=5117 移住に関するさまざまなテーマのトークをお届けする「移住ってどう?」。今回は白川村に移住し、観光協会に勤めるお二人に、多くの観光客を受け入れる仕事の内容や、白川村に移住して感じることについてお話を聞きました!

武内順子さん
岐阜県多治見市出身。2023年8月に白川村に移住し、観光協会に勤める。移住当初は平瀬地区のシェアハウスで暮らしていた。





和田真佐美さん
石川県七尾市出身。2010年に結婚を機に白川村に移住。2023年4月より観光協会に勤める。

和田 私は2010年に結婚を機に石川県七尾市から移住しました。観光協会で働き始めたのは2023年春からです。

武内 私は2023年8月に岐阜県多治見市から白川村に移住しました。長年観光業に携わっていて、岐阜県内で観光の仕事を探していたのですが、縁あって白川郷観光協会で働くことになりました。

和田 主に受付カウンターで、観光客からの相談に対応しています。観光ルートや飲食店の紹介をしたり、「今日泊まれる宿はないか」と聞かれることもあったりしますね。元々英語が話せるわけではなかったので、初めのうちは外国の方への対応に戸惑いましたが、今ではよく聞かれる質問には答えられています。

武内 観光協会では村内の宿泊施設の予約を一部請け負っているので、私は宿泊に関わる業務全般を担当しています。観光協会の事務所があるバスターミナルはお客様のトラブルも多く、忘れ物やバスの運休、乗り遅れ等に英語で対応しています。冬は雪の関係で車の事故が多いので、その処理もありますね。

和田 どこに相談すればいいかわからない場合は、観光協会へまず問い合わせが来ますよね。スタッフは10人もいないので大変ですが、毎日、日本中、世界中の方と出会えるのは刺激的です。

武内 冬は白川郷ライトアップイベントもありましたね。実行委員会と協力して、夏から企画や準備を進めて、当日の運営もしています。あとは観光客へのマナーの呼びかけはしていますが、毎日の掃除は大変です。バスターミナルは数百人の方々が行き交う場所ですので、放置されるゴミも多いです。

和田 暮らして感じるのは、やっぱり白山や庄川などの自然の豊かさ。山登りやキャンプ、釣りなどで、ぜひ体感してほしいです。夜は満点の星空で天の河が綺麗に見られるので、宿泊して眺めていただきたいですね。

武内 ホワイトロードや白水湖の眺めも素晴らしいので、道路が開通されたらぜひ足を運んでいただきたいです。ドライブすると、野生動物も見られるかもしれません。私はよく遭遇します(笑)。南部の平瀬温泉も、観光客は少なめですがゆっくり落ち着いて過ごせますし、ひらせ温泉キャプサイトでキャンプも楽しめます。いつか村内のいろいろな拠点を巡るツアーを企画してみたいですね。

移住体験シェアハウス「やまごや以上ほしぞら未満」

武内 車があるので、暮らしの不便さは特段感じていません。あとはやはり、人付き合いが濃いですね。職場や近所の方に野菜をいただけることもあって、ありがたいです。私は一人で暮らすのが苦手で、移住当初はシェアハウスで暮らしていましたが、同じ立場である他の移住者と一緒で安心感がありました。夕食を一緒に食べたり、たわいのない話をしたり…村のいろいろなことを教えてもらったり、村の方を紹介してもらうこともありましたね。

和田 白川村は会合や行事が多くて大変なこともありますが、準備などに一緒に取り組む中で、親交が深まりますね。私も嫁いだばかりの頃は女性会で顔見知りができました。

武内 仕事とプライベートのコミュニティが重なることも多いので、そういった密なつながりを楽しめる人が住んでくれるといいと思います。





今回のゲストが務める白川郷観光協会の事務所があるのは、白川郷バスターミナル内。高速バスが発着し、多くの観光客が利用する合掌造り集落の入り口です。

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【座談会/移住ってどう?】村の教育を担う、白川郷学園 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou07/ Wed, 17 Jan 2024 07:01:36 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=4792 移住に関するさまざまなテーマのトークをお届けする「移住ってどう?」。今回は白川村唯一の学校であり、小中一貫の義務教育学校であ る「村立白川郷学園」(通称“学園”)に勤める3人の先生に、村の教育についてお話を聞きました!

春見(かすみ)拓哉さん
飛騨市出身。白川郷学園は3年目で9年生の担任。 家族で白川村に移住。

黒岩由季さん
高知県出身。 白川郷学園は初任校で3年目。 7年生の担任。赴任に伴い、現在は白川村に住む。

水野礼菜(あやな)さん
白川村荻町出身。 白川郷学園は3校目で3年目。 養護教諭。

春見 赴任前は飛騨市の学校にいたので、知り合いの先生から「地域との関わりが強い学校」とは聞いていました。最近は働き方改革に伴って教員が地域と直接関わる機会は少なくなっていますが、白川郷学園はそういった流れとは一線を画する方針ですね。保護者はもちろん、多くの地域の方がそういった学園の考え方を理解されていて、とても協力的です。

黒岩 私は高知県出身で、岐阜の大学に通っていたのですが学園の前知識はほぼありませんでした。赴任して感じることは、学年を超えた繋がりが強いことです。1年生と9年生が教室を行き来することも珍しくないですね。クラス替えがないので、他学年の授業をこどもたちが見学しあって、授業の様子や学ぶ姿勢を知る取組みもあります。

水野 私は白川村出身ですが、子どもの頃はまだ白川郷学園はなく、村の小中学校は別々でした。でも村民全員が親戚みたいなので、学年の壁がない雰囲気は昔からありましたね。

春見 教員自身も、担任以外の子どと関わることが多いですね。以前は自分の受け持ちクラスが「自分の生徒」という認識が強かったのですが、ここでは他の学年の子も慕ってくれるので、自然と「学園の子ども全員が自分の教え子」と思うようになりました。

春見 各学年で村民学の方向性は決まっていますが、具体的な内容は個々のクラスで考えます。私が担任する9年生の今年のテーマは「住み続けたい村」。観光客の多い白川村を住みやすくする方法の一つとして、観光客のゴミ捨てマナーの向上について考え、実践しています。課題設定や何をどう取り組むかも、全て生徒主体で決めています。

黒岩 私が担任する7年生は「担い手学習」に取り組んでいます。村にUターンして新たに事業を始めた人から、村外で活躍する陸上自衛隊員まで、生徒が興味を持った“挑戦している人”に話を聞きます。

水野 学園と地域を繋ぐ「ふるさとアドバイザー」をはじめ、村民学は地域の方の協力で成り立っていますね。私も村出身なので、村の方を紹介することもあります。でも、子どもたちから村のあの人に話を聞きたい、となるのは大人と子どもの距離が近い白川村ならではですよね。

春見 村民学以外でも部活動を指導する方がいたり、サークルで年代関わりなくいっしょに活動したりと、接点が多いですよね。私自身も、どぶろく祭で自分の子どもを連れて行った時に、学園の生徒たちが自然と遊んでくれて、人と関わることに躊躇がない子が多いのだと改めて感じました。

黒岩 ICT教育にも早くから取り組んでいるので、タブレットでの資料作成やプレゼンも得意な子が多いですね。

春見 一方で、少人数なのでどうしても学習面では切磋琢磨しにくい雰囲気があります。もう少し学習環境を整えたいです。

水野 生まれた時からずっと自分のことをよく知る人に囲まれていて優しい子が多いのですが、高校で環境がガラッと変わるので戸惑う子もいますね。

黒岩 関わる人の多様性が限られるので、村外との接点を意識的に作っていますよね。6年生を「ジュニア観光大使」に任命して、全く違う環境で育った修学旅行生を案内したり、事前に交流する取組みも行っています。

黒岩 私はプライベートでも親しくなった方に山登りやスノーボードに誘ってもらうなど、村ならではの人付き合いのありがたさを感じています。教育でも、村の方との繋がりを大切にしたいですね。誰でも学校見学できる「地域公開日」には、近所のお年寄りも来てくれます。学園だけでなく、村の方と一緒に子どもたちを育てたいです。

春見 教師が子ども一人ひとりに向き合える強みを生かしつつ、学習面など改善すべき部分を補っていきたいです。

水野 一般的な学校の良さと学園の強みが合体した、ハイブリッドな教育ができる学園にしていきたいですね!

今回の会場

白川小学校と白川中学校が統合し、2017年に開校した白川郷学園。「ひとりだち」を教育目標に、自立、共生、貢献の資質を育む9年間の連続性を生かした教育を行っています。

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【座談会/移住ってどう?】“二十歳を祝う会”とUターン https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou06/ Sat, 07 Oct 2023 06:51:26 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=4438 移住に関するさまざまなテーマのトークをお届けする「移住ってどう?」。今回は、白川村で育った村民の二十歳を祝う「二十歳を祝う会」の開催直前に、その企画・運営を担う実行委員会のメンバーであり、数年前に村にUターンした3人にお話を聞きしました!

石田聖也さん

白川村稗田地区出身。大学時代を岐阜県大垣市で過ごし、2020年にUターン。「合掌造り民家園」で働く。

大野日茉梨(ひまり)さん

白川村保木脇地区出身。大学卒業後、名古屋市で働いたのち、2022年にUターン。実家の土木事業所と、アルバイトとして旅館で働く。

大溝 琴さん

白川村飯島地区出身。大学卒業後、2023年にUターン。実家の土産物卸会社と、アルバイトとして土産物屋で働く。

豪雪地帯である白川村では毎年、村外に住む村出身者が帰省しやすいお盆に、「二十歳を祝う会」が行われます。3人はその企画・運営を担う「二十歳を祝う会」の実行委員会のメンバーです。みなさんはなぜ、実行委員会に参加しようと思ったのでしょう?

石田 僕は青年団に入っているのですが、他の団員から誘われて参加しました。自分自身、成人式で祝ってもらってとても感動したので、次の世代にも伝えたいと思って。

大野 村の広報で「二十歳を祝う会」の実行委員会の募集を知って、同級生の琴さんを誘って参加を決めました。私たちの代は大雨で式典が中止になってしまったんですけれど、記念品として恩師の先生が出演したDVDをいただいたのがとても嬉しくて。後輩にも同じように喜んでほしいなと思いました。

大溝 私も自分の時は式に参加できなかったからこそ、関わってみたいと思いました。白川村の成人式は、今はこうやってみんなで作り上げるものになっていますが、昔はそうではなかったそうで、父が成人式の運営に携わったころにやり方をいろいろと変えていったそうです。そんな話を聞いていたのも、参加したいと思ったきっかけの一つですね。

実行委員会ではどんなことをしていますか?

石田 7月初旬から1〜2週間に一度集まって、企画の検討や、当日の進行の確認をしています。

大溝 毎年村民やゆかりのある方の写真を100枚くらい集めるんです。実行委員会みんなで手分けして撮影していますね。

大野 お祝いの品や、式典で振る舞う軽食の内容も考えます。結旨豚(ゆいうまぶた)や白川村で採れた野菜、村のお店のベーグルやチーズケーキを考えています。あとは当日企画しているクイズのために、二十歳のみんなにアンケートを取ったりもしていますね。

当日はどんな役割があるのでしょうか?

大溝 仕事がある実行委員会のメンバーもいるので、参加できる人で式を運営します。

大野 私と琴さんはクイズ企画で司会をします。緊張しますが、私たちも楽しみです!

今年の二十歳を迎える村民は全員村外から集まるそうですね。みなさんも一度は村外に出てUターンされたそうですが、昔から村に戻ることを考えていましたか?

大溝 私は昔から実家の土産物の卸売会社「笑顔屋」を継ぎたいと思っていたので、2023年春に大学を卒業して戻ってきました。

石田 僕は大垣市で大学時代を過ごしていましたが、やっぱり地元が住みやすく感じたので、卒業した2020年に戻ってきました。

同級生でUターンしている方はあまりいないのでしょうか?

石田 そうですね。25人中4人くらいです。

大溝 私たちの代も同じくらいです。村の人からも「帰ってきたんだね!」とよく驚かれます。

大野 私は2022年に戻りましたが、元々は村に戻ることは考えていなかったです。村外にいる同級生は、白川村は仕事が少ない、都会と比べたら刺激がない、と思っている子が多い気がします。

大溝 でも最近は、若い人がお店や宿を始めていて、私はすごく刺激を受けているし、白川村での暮らしがとても楽しいです。だからこそ、白川村の暮らしの魅力をもっと知ってほしくて、村出身の人や、村の仕事や暮らしに興味がある人が交流できるイベントを日茉梨さんと一緒に計画しています。

大野 Uターンした私たちが伝えるからこそ、意味があるんじゃないかと思っています。

石田 観光客も、合掌造り集落をさっと見るだけの人が多いけれど、もっと村の行事などを通じて村民と観光客が関われるといいですね。この実行委員会にも移住者の人が参加してくれていますが、移住者と元々の村民で協力しながら、一緒に村を盛り上げられればと思います。

2023年8月14日、実行委員会の尽力が実り「二十歳を祝う会」は無事に開催されました。今年二十歳を迎えた方々の中から、今後村に戻って実行委員会に関わる人が現れ、さらに次の世代へと受け継がれていくといいですね。

今回の会場

旧平瀬小学校を活用した施設、白川村南部地区文化会館(NBK)。会議などに使えるラウンジや学習室に、図書室、調理室、トレーニングルーム、音楽室などがあります。

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【座談会/移住ってどう?】地域のルールと移住 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou05/ Fri, 07 Jul 2023 11:02:26 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=3808 移住に関するさまざまなテーマのトークをお届けする「移住ってどう?」。今回は、地域の慣習やしきたりなどをまとめた「集落の教科書」を2018年に制作した石川県七尾市の高階(たかしな)地区(人口約千人)を訪問。制作の経緯や反響についてお聞きしました。

宮崎 𠮷春(よしはる)さん

石川県七尾市高階地区出身。七尾市たかしな地区活性化協議会会長。

坂口 初男(はつお)さん

高階地区出身。七尾市高階地区コミュニティセンター長。空き家の情報管理を担う。

高橋 雅人(まさと)さん

七尾市地域おこし協力隊(高階地区)。2021年に福井県から移住。

聞き手:白川村役場観光振興課/一般社団法人ホワイエ

「集落の教科書」制作の経緯

高階地区の「集落の教科書」では、これまで“暗黙の了解”となりがちだった地域のルールを明文化し、まとめています。どんなきっかけで制作されたのでしょうか?

宮崎:前任の地域おこし協力隊の一人が京都府南丹市の「集落の教科書」を紹介してくれたことがきっかけです。地域の魅力だけじゃない、ありのままを伝えているところが良くて、高階地区でも作ることになりました。

白川村にも村民の助け合いである“結”など、地域で明文化されていないルールがたくさんあります。「集落の教科書」では、あいさつ回りから町会費、葬式などかなり細かな情報が掲載されていますが、制作期間にはどのくらいかかったのでしょうか?

坂口:地域の課題に住民が協力して取り組むため、七尾市助成金を活用して、2018年の1年間で作り上げました。

宮崎:6月には南丹市で教科書の制作に関わったNPOの方に「集落の教科書」に対する、住民向けの説明をしてもらいました。夏休みには、能登のまちづくり会社「御祓川(みそぎがわ)大学」を通じて募集した、県外の大学生2人がインターンとして集落を回って、ヒアリングをしてくれましたね。

地域の住民ではない人がヒアリングすることに、特に抵抗はなかったでしょうか?

坂口:住民には、事前にヒアリングについて伝えていました。若い人が熱心に話を聞いてくれるからか、喜んで話してくれましたよ(笑)。

高階地区の住民は移住に対して好意的な雰囲気なんですね。

坂口:昔はそれほど移住に前向きではなかったのですが、初期の移住者の方たちが地域でとてもよく動いてくれて、イメージが良くなりました。高階地区では13年間で36人が移住していて、今では「移住の里」と言われることもあります。

集落の教科書の反響は?

「集落の教科書」に対する、移住者や住民の反応はいかがでしょう?

高橋:私は2021年に地域おこし協力隊として福井県から移住しました。当初、妻は移住に不安があったのですが、「集落の教科書」を通じて事前に地域を知ることができました。それに、こうした冊子を作る地域なら移住者を受け入れてくれそう、という印象を持ったので、高階地区を移住先に決めました。

宮崎:住民の反応も意外と大きくて、隣町でもルールが違うことを知ったり、自分の地域のしきたりを改めて考え直すきっかけにもなりましたね。

坂口:「集落の教科書」を見て移住した人はまだほとんどいないですけど、自治体からの視察は多いです。2020年には情報を更新して第二版を発行しました。

白川村でも地区によって組織の体制や行事、会合の頻度などはかなり違っています。人口が減り、高齢化が進む中で、他の地区を参考にしながらこれまでのやり方を見直すタイミングが来ているのかもしれません。

移住施策に取り組むことは仲間を増やすこと

宮崎:高階地区も小学校が廃校になったり、コロナで地域の行事が存続できなくなったりと課題がたくさんあります。危機感を持って地域のことに取り組まないといけないですね。

坂口:高階地区は、特徴的な特産物や産業、人が集まるような自然はありませんが、人情に厚いまち。今後も人口の増加というより“仲間を増やす”という想いで、地域や移住の取組みを進めたいです。

高階地区では、住民主導で移住者の受け入れ態勢が作られていることが印象的でした。今後は白川村でも、住民や事業者、行政が協力しながら移住者を受け入れる態勢を整え、移住施策に取り組んでいく必要があるかもしれません。

高階地区のみなさま、ありがとうございました!

今回の会場

旧高階小学校を活用した高階地区コミュニティセンター。地域の行事やサークル活動など、さまざまな住民活動の拠点となり、暮らしの困りごとの相談にも対応している。

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【対談/移住ってどう?】家業と地域・子育て https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou04/ Sat, 08 Apr 2023 02:38:25 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=3103 移住に関するさまざまなテーマで対談する「移住ってどう?」。今回は、白川村で家業の旅館を営みながら、2児の父親として子育てにも奮闘する三輪さん、谷口さんにお話を伺いました。

三輪 了(みわ さとる)さん

愛知県出身。高山市に住んでいた時に、白川村の「城山館」(現在改修中。2023年4月中旬再開予定)が実家であるゆきさんと出会い、結婚を機に移住。若旦那を務める。2児の父。

谷口 暁良(たにぐち あきら)さん

白川村出身。調理の専門学校を卒業後、愛知県のいくつもの飲食店で腕を磨いた後、2020年にUターン。実家の「お宿 湯の里」を継ぐ。2児の父。

白川村に住むに至った経緯を教えてください。

谷口:白川村出身で、愛知県のいくつかの飲食店で働いた後、白川村に2020年に戻って「お宿 湯の里」を引き継ぎました。今は妻と両親、子ども2人と暮らしています。

三輪:愛知県出身で、23歳から高山市で働いていたのですが、ある会合で今の奥さんに一目惚れして、結婚しました。現在は義実家の旅館「城山館」で若旦那として働いています。奥さんや子ども2人、義父母、奥さんの兄弟など合わせて10人で暮らしています。

三輪さんは大家族なんですね!お二人は家業を継いでいますが、引き継ぐにあたって何か想いはあったでしょうか?

谷口:兄が早くから違う道に進んだので、自然と旅館を継ぐ意識は持っていました。動物が好きだったり、他にも興味を持つことはありましたが、最近は旅館で「ペットと泊まれる部屋」を始めたり、料理以外の願望も、この仕事をしながら実現できていると感じていますね。

三輪:当初は結婚後、高山市で暮らす予定だったので旅館を継ぐつもりはなかったんです。けれども、周りから家業を続ける大切さを聞いて、腹をくくって旅館を継ぐことに決めました。

谷口:僕は料理以外の経験はあまりないから、了くんにはいろいろ相談しています。家族経営の旅館は村内でも少ないから力を合わせてやっていきたいね。城山館はいま改装中だから、了くんにはうちの旅館を一時期手伝ってもらったりもしていました。

三輪:そうなんです。湯の里さんは自分が働いていたのもあって、半分自分の家みたいになっていますね。(笑)

旅館を営みながらの子育てはいかがでしょう?

三輪:会社勤めの頃と比べると、一緒に過ごせる時間はすごく長い。それと、僕の住む荻町は子どもと歩くにはすごくいい環境です。世界遺産や食べ歩きできる飲食店がすぐそこにあって、もちろん山や川も近い。

谷口:僕の住む平瀬も、夏は川、冬は雪と、子どもが遊ぶのにいい場所。平瀬は地域全体が親戚みたいで、近所のおじいさん、おばあさんも孫のようにうちの子どもを可愛がってくれます。高山市や愛知県でも暮らしてきましたが、人と人との距離感が全く違いますよね。自分もここで生まれ育ってきたのもあって、子育てするならこういう環境がいいなと思いました。

三輪:村民はもちろん、観光客との触れ合いもあって、楽しいですよ。ただ、家が職場で仕事をしながら子育てもしなければならないので、大変な時もあります。

谷口:それと、ぼくたちは旅館業をやっているから子どももお客さんとかいろいろな人と関わるけど、ほとんどの白川村の子は限られた人としか付き合いがないから、高校に進学して初めて村を出た時に人間関係に苦労するという話も聞くね。白川郷学園や保育園でフォローしてもらえるといいなと思う。

村ならではの人付き合いが、子どもの成長にも強く影響しますね。お二人自身の地域の関わりはいかがでしょう?

三輪:僕は消防団に入っています。元々村民ではないので、村を歩くと「誰だろう?」と思われることも多くて。消防団に入ってからは、村の方に覚えてもらえるようになりました。

谷口:僕も消防団に入って、地域の皆さんに「村に帰ってきたんだね」と知ってもらえました。地域のコミュニティに繋がる場だなと思います。

三輪:荻町は毎月の「寄り合い」のほかに「税金寄り合い」という集まりもあります。世帯で一人出席が必要で、今は義父が出ていますが、ゆくゆくは自分になるかな。

谷口:そんなに集まりがあるんだね!平瀬は頻繁に集まる機会はないから、地域を盛り上げるために何かやりたいなと考えています。

お二人はそれぞれ、村外で働いた経験がありながら、現在は白川村に根を下ろして生活されています。そんなお二人から見て、今後、白川村で移住者を増やしていくには何が必要だと考えていますか?

谷口:白川村は合掌造りとか、保守的だからこそ守られてきた部分もあるけど、これからは新しい人も受け入れて、切磋琢磨することが大事だと思う。観光でも、暮らしの面でも、魅力ある地域になってほしいね。

三輪:あとはアパートとか、移住者が暮らす場所が整うといいよね。白川村で住みたい人を受け入れやすい環境になればと思いますね。

ー日々、旅館を営みながら多くの観光客を迎え入れているお二人。村外で暮らしてきた経験があるからこそ、白川村の魅力と課題の両面が見えているように感じました。お二人とも、ありがとうございました!

今回の対談会場

今回の対談会場は、谷口さんが営む白川村平瀬の旅館「お宿湯の里」。趣ある佇まいに、源泉掛け流しの平瀬温泉、地元の食材満載の郷土会席が楽しめる。旅館には珍しいペットと泊まれる客室も。

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【対談/移住ってどう?】移住者、若者との交流 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou03/ Tue, 31 Jan 2023 10:38:58 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=2836 移住に関するさまざまなテーマで対談する「移住ってどう?」。今回は、長年白川村で暮らし、移住者や若者をあたたかく見守っ てくれる“村のおばあちゃん” の佐藤さん、蟻原さんに、白川村の特徴的な相互扶助の精神「結(ゆい)」をはじめ、村民同士の助け合いや交流についてお話を伺いました。

佐藤 直子(さとう なおこ)さん

白川村小白川地区で生まれ、結婚を機に白川村荻町へ。呉服屋を経て、現在は「喫茶さとう」を切り盛りする。愛称は「なおちゃん」。

蟻原 基子(ありはら もとこ)さん

白川村鳩谷地区で生まれ育つ。かつては看護師や薬種商として働き、現在は役場近くでゲストハウス「Ant Hut」(アントハット)を営む。愛称は「もっちゃん」。

お二人は普段から移住者や若い方と交流されていますが、何かきっかけはあったのでしょうか?

佐藤:地域おこし協力隊の制度が始まった頃、よく協力隊の子がうちに訪ねてくれて、関わりができたね。

蟻原:うちのゲストハウスに「白川郷トヨタ自然學校」の就職試験を受ける子たちが泊まってくれてね。その子達が村に就職してからも、遊びに来てくれるんやよ。

蟻原さんが営むゲストハウス「Ant Hut」(アントハット)

具体的にはどんな交流があるのでしょう?

佐藤:「喫茶さとう」でアルバイトしてもらったり、インターンで村に来た大学生が荻町の店で働いてたときは、仕事が終わってからみんなでうちで夕飯を食べたり、料理が好きな子には白川村の郷土料理を教えたりもしたよ。

佐藤さんが営む「喫茶さとう」

蟻原:一緒に山菜採りに行って山でご飯を食べたり、ゲストハウスで話したりしてね。何でもない世間話だけど、嬉しかったことや悲しかったことをいろいろ語りあったんや。

佐藤:他人を自宅にあげることに驚く人もいるけど、特別なことは何もしてない。食事も漬物とか豆腐ステーキとか、簡単なものを食べてくれたよ。

蟻原:無理をすると続かないから、いつも自分が食べているもので、おもてなししないとな。

白川村の人は親切な方が多いですが、お二人は特に移住した方や若い人をあたたかく迎えていますよね。何か思いや考えがあるのでしょうか?

佐藤:昔は村が今ほど裕福じゃなかったけど、もっと「結」が強かったの。そのおかげで今の暮らしがあるから、すごく感謝してる。だから、これからも結が続いてほしいし、新しく白川村に来てくれた人とも心を通わせて、助け合っていきたいと思ってるの。

蟻原:自分が知らない土地で一人ぼっちだと寂しいじゃない?だから、移住してきた人の心の拠り所になればと思ってね。

佐藤:ちょっと困った時に「あのおばあさんに話を聞いてもらおう」と思ってもらえるといいよね。信頼できる人が周りにたくさんいるほど、その土地への安心感や愛着が生まれると思うよ。

蟻原:移住の取組みも、行政だけでなくて地域を巻き込んでやらないとね。移住してきた人が関わるのは、結局、地域の人だからな。

佐藤:世界遺産に登録された頃、村で講演会があって、その中で「白川村は“ピーマン”にはならないように」って言われたの。合掌造りの外側を守るだけではなくて、中身が空洞にならないように、とお話されて、それがすごく印象に残ってる。

蟻原:“中身”というのが、白川村だと結の精神や、助け合うことなのかもしれないね。

佐藤:移住する人も、やっぱり結を大切にしてくれる人がいいね。甘えたり、頼りっぱなしではなくて、一人一人やれることは自分でやりながら、それが茅葺き屋根の茅のように束になって、助け合える関係にできたらいいなと思うんや。

蟻原:今はだんだん結が弱くなっているから、改めて村民も助け合う心を育てないとね。移住した人に“よう来てくれた”って気持ちを伝えていかないと、って思うよ。

そういった心を育てるにはどんな取組みが必要だと思いますか?

蟻原:村の未来について、みんなで腹を割って話せる場があればいいなと思う。同じ思いの人が集まって、そこに移住してきた人も加わって、自分事として村のことを考える人が増えていくと、すごくいい村になると思うよ。

佐藤:昔からの白川村の良いところを大切にしながら、いい考えは取り入れることができると、もっと住み心地がいい村になっていくんじゃないかなあ。

ー飛騨日日新聞編集部も日頃からお世話になっている「なおちゃん」と「もっちゃん」。お二人に持参していただいたお茶やお菓子をいただきながら、和やかな雰囲気で取材も進められました。そして、取材後はなおちゃんのご自宅にお邪魔して手作りの稲荷寿司やお漬物もごちそうになりました。お二人のような“村のおばあちゃん”の存在は、新たに白川村で暮らしを始める方にとっても、きっと心強いことでしょう。

今回の対談会場

今回、対談を行った会場は、飛騨日日新聞の拠点である白川村荻町の白川郷合掌文化館(旧松井家)。取材を行った11月の終わりは、ちょうど雪囲いが終わり冬の支度が整っていた。

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【対談/移住ってどう?】村の子育てと地域との関わり https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/ijyuttedou01/ Mon, 11 Jul 2022 21:00:00 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=1796 移住に関するさまざまなテーマで対談する「移住ってどう?」。今回は、子育て奮闘中で普段から仲が良い2人にお話を聞きました!

余語茉莉花(よごまりか)さん

白川村生まれ。2018年にUターン。現在は「おけさ民芸品店」「飛騨牛にぎり処 おけさ」で働く。2児の母。

上手敬子(かみでけいこ)さん

金沢市出身。結婚を機に白川村に移住。現在は「ふるさと味処 結の郷」で働く。2児の母。

まずは、移住のきっかけを教えてください!

上手:白川村出身の旦那さんとの結婚で移住しました。金沢市の飲食店で働いていた時にお客さんとして出会って、付き合い始めて。最初は結婚まで考えていなかったんですが、白川村に遊びに来るたびに「いつお嫁に来るの?」と周りからすごく聞かれましたね。でも、嫌な気はしなくて、むしろ歓迎ムードが嬉しくて、嫁ごうと思いました(笑)。

余語:私は白川村出身だけど、高校進学後は村外にいました。Uターンのきっかけは都会での子育てに限界を感じたから。2人子どもがいると1人が病気になってもなかなか病院に行けなかったり、公園の人の多さが気になったり…。それで自分が育ったような環境で育てたいなと考えたの。それと、これから世の中がどう変わっていくかも分からないから、自給自足というか、自分の力で生きられる子になってほしいと思って、当時住んでいた名古屋で自然に囲まれた幼稚園を探したんだけど、費用が高いし、園庭も狭くて…。

上手:全国色々探したんだよね。

余語:そう、北海道から九州まで調べたね。全国でいい場所を探していたら、実は白川村が条件にぴったりで!

上手:元々はUターンを考えていなかったのが面白いよね!

余語:本当に、灯台下暗しだったよね(笑)。それに知り合いも多くて安心できるのもあって、帰ることに決めました。あとは旦那さんは海外の友人が多くて、白川村だと世界遺産もあって、案内しがいがあるのもいいなと思って。

実際に、村での子育てはどうですか?

上手:村の人みんなが見守ってくれるのがすごくいい。自分の子どもじゃなくても悪いことをしたら叱ってくれる。子ども同士も学年関係なく仲がいいよね。

余語:前に「白川郷 どこにいっても ぼくの家」という川柳を作った人がいたけど、本当にその通りだなと思う。

上手:でも、村に親族がいない人は大変かも。保育園の預かり時間が短いし、延長保育や土曜保育の制度はあるけど、利用することがあまり一般的ではないよね。

余語:祖父母が世話できることが前提になっているかもね。子どもを預かる公的な制度が整っていけば、子育て世代も移住しやすいんじゃないかな。

上手:でも、移住した家族の子どもも、他の子と同じようになじんでいるのがほとんどだよね。

移住者はどうすれば地域になじめるでしょうか?

余語:いろんなコミュニティに顔を出すことかな。公的なものも仲間内の飲み会も、手を挙げれば断られることはないと思う。

上手:私たちが出会ったのもどぶろく祭だったよね。

余語:どぶろく祭には、村を出た人も大体帰ってくるよね。私も絶対に帰ってきてた。毎年本当に楽しみで、高揚感がすごいんだよね。最近は結(ゆい)の活動も簡素化しているから、村民がいちばん一致団結すると思う。この時は村の人もすごくオープンだからなじみやすいかも(笑)。

上手:良くも悪くも、白川村では人との繋がりが必須だなと思う。「自分たちだけで暮らしたい」という人は難しいかもね。私は移住してきて村民に「当たり前やさ」って言われることが普通じゃないよ、と思うことが多かったから、その「当たり前」を教えてくれる人がいるといいなと思う。

余語:移住者と元々の村民を繋いでくれるような人と、最初のうちに出会えるといいよね。

今後、白川村がどんな村になるといいと思いますか?

余語:村出身の人も、移住者もそれぞれの良さを生かせる希望が持てる村になるといいな。「この村から何か発信したい!」と思えるような。

上手:村外から人が来てくれる「面白そうな村」になってほしいね。やりたいことを応援してくれる村というか。

余語:でも、合掌造りとか結(ゆい)の心とか、白川村が大切にしてきたものを守ることも大事。「守りながら変える」ことができるといいね。

上手:村民で移住者に抵抗がある人もいるけど、昔ながらの良さを維持するためにも、村民と移住者が交流して、お互いに柔軟になっていけるといいね。

ー白川村出身者、移住者という違いはありながら、それぞれの立場や経験から、移住への考えや白川村への思いをたくさん語っていただきました。お二人とも、ありがとうございました!

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【余語さんが働くお店】

おけさ民芸品店・飛騨牛にぎり処 おけさ

余語さんが働く「おけさ民芸品店」「飛騨牛にぎり処 おけさ」。「おけさ民芸品店」では、白川郷らしいお土産の品が豊富に揃います。テイクアウトのフードやドリンクがいただける「飛騨牛にぎり処 おけさ」では、飛騨牛にぎり、結旨豚(ゆいうまぶた)にぎり、飛騨牛軍艦の「飛騨の至福3種盛り」が人気。結旨豚にぎりを食べられるのは「飛騨牛にぎり処 おけさ」だけ!

飛騨の至福3種盛り(1,000円)

おけさ民芸品店・飛騨牛にぎり処 おけさ

住所/岐阜県大野郡白川村荻町103

営業時間/おけさ民芸品店 9:00〜17:00、飛騨牛にぎり処 おけさ 10:00〜16:00頃(なくなり次第終了)

定休日/不定休

Instagram/@okesa_shirakawago

【上手さんが働くお店】

ふるさと味処 結の郷

上手さんが働く「ふるさと味処 結の郷」。白川産米で作る自家製の焼きおむすび「ゆい結び」が名物。香ばしい醤油の香りが食欲をそそります。結旨豚やA5等級の飛騨牛の串焼き、飛騨牛乳使用のソフトクリームなど、白川郷の散策中にいただきたいグルメもたくさん!夏には冷たいドリンクもおすすめです。

ふるさと味処 結の郷

住所/岐阜県大野郡白川村荻町103

営業時間/9:30~16:00

定休日/不定休

WEBサイト/https://yuinosato.base.shop/

Instagram/@shirakawago__yuinosato


今回の対談会場

白川郷合掌文化館(旧松井家)。飛騨日日新聞の拠点である合掌造りの建物で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定され、世界遺産にも登録されている白川村荻町にある。

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【座談会】豪雪と闘い暮らしを守る、白川村の建設会社 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/kensetsu/ Tue, 13 Apr 2021 10:40:47 +0000 https://www.vill.shirakawa.lg.jp/hidanichi/?p=1057 多いときには人の背丈を優に越える2メートル以上もの積雪を記録する豪雪地帯白川村。延々と降り積もる雪で村一帯が覆われます。そんな冬の村の生活道を守るのは、村内8社の建設会社。毎年初雪が降る11月から3月上旬には、土木の仕事を休み、除雪作業に専念します。除雪の裏話や赤裸々なトークが満載の、建設会社3社による特別座談会をお届けします。
[プロフィール](写真左から)
沢田康仁(さわだ・こうじ)/ 沢田建設株式会社
中森孝博(なかもり・たかひろ)/ 御母衣建設株式会社
坂次正行(さかつぎ・まさゆき)/ 小坂建設株式会社

まず初めに自己紹介をお願いします。

沢田 沢田建設の沢田康仁です。除雪歴は26年かな。

中森 御母衣建設の中森孝博です。除雪歴は20年くらいです。

坂次 小坂建設の坂次正行です。僕は高速の除雪をしていたことはありますが、白川では除雪歴3年。まだ初心者マークのほやほやです(笑)。うちは除雪をするのは1人で、誰も教えてくれる人はいないので、現場に出て勉強中です。

沢田 それはすごいな! 1人なんや。

坂次 ずっと気が張ってるから、すごく疲れるよ。孤独との戦い。その分の責任感はある。誰のせいにもできないからね。

沢田 最初の頃は緊張したよなあ。一人前になるまではどれくらいかかったかな?

中森 1人で任せられるのは5年かな。除雪車には誰でも乗れるけど、雪の状態や道路のことを覚えるとなると5年ですね。いろんな雪の降り方を経験してね。

沢田 数えられないくらいのパターンがあるよな。

中森 みんな自分の担当区域は目をつぶってでもできるんじゃないかと思うくらい、ガードレールや道路標識の位置とか全部把握してますね。

沢田 自分の担当区域は完璧に把握しているけど、他の区域はようやらんね(笑)。

除雪は何時からスタートしますか?

沢田 朝3時に起きて、雪の状態を確認してみんなに電話で出動の連絡をする。除雪作業がスタートするのは4時くらいかな。

中森 うちは3時出発。2時に起きて、現場を一通り確認する。御母衣から荘川まで行くんですけど、一度行って帰ってきて積雪の状態を確認したら、みんなを電話で起こす。

坂次 うちもそれくらいだな。基本的には、担当区域が通勤や通学の人が通行し始めるまでに終わるように。そこから逆算して、雪の量によって3時の日もあれば、4時の日もある。

沢田 沢田建設の担当区域は白川郷学園の通学路が含まれているから、特に子どもたちのことが気にかかる。もし、歩道が雪で通れなくて、子どもが車道に出でしまったら事故にもつながるから。

坂次 スクールバスが通るまでには絶対仕上げるようにしてるな。

中森 どうしても間に合わない時はひとまず1車線を開けるんです。片道15kmくらいの区間だから、全部やってると間に合わないんですよね。

それだけ朝が早いと生活のリズムも変わりますよね。

沢田 冬の期間だけは完全に除雪に合わせた生活リズムになりますね。

中森 21時にはもう寝てしまうかな。

坂次 天気予報で翌日降らないとわかったときは爆睡ですよ(笑)。

中森 大体、Yahooとお天気.comとウェザーニュース、3つのお天気アプリを確認して、あとはその時の振り方を見ればだいたい翌朝の積雪の様子が想像つく。年によって当たるアプリが違うんだよね。

沢田 でもさ、毎日起きてると除雪ない時でも目覚めるよな(笑)。目覚ましより先に起きちゃう。

中森 わかる、わかる。この感覚がもとに戻るまでは1週間くらいかかるんだよね。曜日感覚もなくなる。

沢田 冬の時期は決まった休みはないし、今年は大晦日も正月も出動してたもんなあ。

中森 僕は過去に家族旅行中に大雪になることが分かって、目的地に着いてすぐに除雪のために一人だけ帰ってきちゃったことがあるよ。もうお父さんとは旅行行かないって言われた(笑)。

白川村の除雪の技術力は非常に高いと聞きました。

中森 直接言われたことはないけど、白川は除雪がきれいみたいだよね。10年くらい前までは業者間で差があったけど、最近はどの業者でも技術力がかなり高い。

坂次 それはあるかもしれない。アスファルトが見えるまで除雪するところは他の地域ではほとんどないんじゃないかな。

沢田 僕は高山出身だけど、高山と比べても全然違う。でも、それは技術力の高さだけではなくて、雪を捨てる場所があるからだと思うんだよね。

中森 高山には雪捨てる場所がないもんね。

沢田 そうそう、除雪をしても雪を除ける場所がないから沿道に溜まっていってしまう。その点、白川は田んぼや使っていない土地を村民が無償で提供してくれるから、僕たちも雪を捨てに行けるんだよね。

除雪を続けられている原動力はなんですか?

中森 それはもう仕事だからとしか言いようがないよなあ(笑)。

沢田 村のみんなの生活に直結するから休むわけにはいかない。

坂次 村民の生活を守るという、使命感かな。

沢田 昔は40歳も過ぎれば、除雪作業は若手に世代交代できたけど、今はもう平均年齢が40代くらいになってきている。人数が多かった時は交代制でできたけど、今は1人が12時間除雪し続けることも少なくない。会社も減ってるから担当区域も広くなったしね。

中森 そもそも建設業界に入ってくる若い人がいないですよね。飛び込んできたとしても、経験がいるから時間がかかる。大変な仕事だけど、みんな責任感を持ってやっています。どんなに夜中に電話しても電話に出る。中には寝ぼけている人もいるけど(笑)。

沢田 そうやな。昔に比べれば機械がよくなって、ずいぶんと除雪しやすくなってるから、僕は結構楽しんで乗ってます。除雪中に子どもたちが手を降ってくれたり、地域の方が温かい缶コーヒー差し入れてくれることとか、励みになりますよね。今年もあともう一息かな!

みなさん、本日はありがとうございました!

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